新元湯

大正13年から続く老舗銭湯 
利用者、文化を守るため新たな取り組みを続ける憩いの場

かつては河口の漁師町としてにぎわった下之一色町。全盛期には7軒あった銭湯もいまや1軒となりました。
新元湯は、名古屋市中川区下之一色町で大正13年より続く、老舗銭湯です。
銭湯を必要とする当地域に住んでいる方々をはじめ、地域内外のさまざまな方々の“憩いの場”“文化を語る場”として、よりよいサービスの提供を目指しています。

下之一色のまちなみを見守ってきた歴史ある建物

新元湯の建物は 1924(大正十三)年に建築されてから、戦争の空襲や伊勢湾台風で被害を受けたものの、今日までその景観を残してきました。
2012年11月には、文化的価値があるとして、名古屋市の「認定地域建造物資産」として登録されました。
https://www.city.nagoya.jp/kankobunkakoryu/page/0000099514.html

館内には、大正時代に作られたタイル貼りのお風呂や、昭和レトロ満載の脱衣場など、昔懐かしい雰囲気を今も色濃く残しています。

利用者の生活を支える取り組み

下之一色町周辺には漁師町の名残があり、家のつくりの関係で、お風呂がない家もあります。そうした方々を含め、地域の皆さまの健康と暮らしを支えるため、私たちは銭湯を守り続けています。これこそが新元湯の大きな役割であり、誇りです。

地域の憩いの場を末永く残したい

新元湯は、建物の劣化や、取り巻く環境、ボイラー燃料の高騰などの様々な問題に直面しています。一方で、長年にわたり地域の皆様に親しまれ、交流と憩いの銭湯として愛されてきた場でもあります。
この大切なつながりと文化財としての深い歴史と趣を風化させず、末永く残していこうと、地域の皆様にご協力いただきながら存続活動に取り組んでいます。

銭湯から地域活性化、活気のある下之一色に

下之一色は、庄内川と新川に挟まれ、かつては漁師町として栄えていましたが、現在は高齢化が進み、魚市場の閉鎖や商店街の衰退など、町の活気が薄れつつあります。
そこで、新元湯から広がる地域活性化プログラムを展開し、地域内外の方々を呼び込んで、みんなが癒される空間と活気ある町づくりを目指しています。

製作事例

趣深いデザインと歴史的価値を持つ建物

柱頭部分に縦筋を入れた4本の角柱、中央を高くした階段状のパラペット、RC造では珍しい勾配屋根などが特徴的な、名古屋初期の鉄筋コンクリート建築です。2012年11月に名古屋市の「認定地域建造物資産」として登録されました。

愛され続ける円形タイル浴槽

大正時代に作られた希少な円形浴槽が堂々と中央に据えられた、趣深いタイル調の浴室です。お湯は新環式ではなく、営業日に毎回新しく張っています。

昭和レトロを感じる脱衣所

男湯の木製ロッカーや大きなハンドルの付いた古いマッサージチェア、女湯にはイスと一体になったドライヤーなど、新元湯の脱衣所はまるで昭和にタイムスリップしたような感覚が味わえます。

地域に根差した憩いの場

新元湯では年代、職業や地位に関係なくさまざまな人が疲れを癒し、会話に花を咲かせながら、交流の場を形成しています。

会社概要

会社名新元湯
創業1924年(大正十三年)
資本金-
本社所在地愛知県名古屋市中川区下之一色町南ノ切54-1
代表者二村 敬一
従業員数2人
企業 URLhttps://shinmotoyu.jp/
事業内容一般公衆浴場の運営

サステナブル、SDGsに向けたビジネスプラン立案

レトロを未来へつなぐ 老舗銭湯の持続可能な経営への挑戦

既存にとらわれない新しい浴場経営プラン立案

ビジネスプランの特徴

新元湯では、大正時代から続く、趣のある雰囲気を大切にしながら、新たな収益源を確保するために「商品販売」の充実を図るとともに、新規事業として「予約・貸切り」「スペースレンタル」を展開します。

レトロをコンセプトに、オリジナルデザインのグッズや地元企業とのコラボ商品で、銭湯の魅力を形にします。
また、銭湯のイメージを大切にしながら、貸切利用やイベント開催を通じて、多様なニーズに対応し、新たな客層を開拓します。

持続可能となるポイント

今回の事業では、将来も事業継続できるよう、既存の経営資源を活用しながら新たな収益源を確保するビジネスプランを立案しました。

広報面では、ホームページの立ち上げや「なごや・ロケーション・ナビ」を活用した情報発信、SNSでの細かな更新などを行い、集客力を高めていきます。
これにより、従来の常連客だけでなく、新しい層にも銭湯の魅力を届け、利益が確保できる持続的な経営を目指します。

また、地域の交流拠点としての役割も果たし、地域活性化にも貢献していきます。

インタビュー

本事業への参加に至る背景

下之一色地域では銭湯利用者の減少が著しく、水道光熱費の高騰も重なり、経営の維持が厳しい状況にあります。
しかし、この地域の文化的価値や歴史ある建物を守りつつ、地域に根ざした交流の場や観光施設としての認知度を高めていきたいと考えました。

さまざまな取り組みを行う中で、どのような施策が価値向上につながるのか、新規利用者を獲得し、地域に根付く銭湯となるためにはどうすればよいのかを、専門家と共に検討したいと考え、本事業に参加しました。

参加しての所見や感想

これまで、経営者自身の高齢化や建物の老朽化、設備故障による修繕費の増加など、様々な課題を抱えており、『このまま銭湯を閉じてもよいのではないか』と考えることもありましたが、今回のプロジェクトでチームを組み、意見を出し合う中で、新元湯への「想い」や「楽しみ」が改めて芽生えてきました。

このプロジェクトを通じて、多くの人の意見や支援を得ることで、『もう少し続けてみよう』という前向きな気持ちが生まれました。

今後の取り組み

まだ始まったばかりですが、今後はホームページやSNSの運用に力を入れ、新しいお客様を呼び込むとともに、長年ご利用いただいているお客様も大切にしていきたいと考えています。

また、地域の文化的価値を活かしながら、銭湯の新しい活用方法を模索し、各地から人々が自然と集まる場となるよう、持続可能な経営を目指して挑戦を続けてまいります。

新元湯

名古屋市中川区にある銭湯です。
建物は大正時代の物。名古屋市「登録地域建造物資産」に登録されています。

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